結論:架空の人物を作るのではなく、実際の声を整理する

ペルソナとは、自社のお客様の典型を一人の人物像としてまとめたものです。カスタマージャーニーとは、そのお客様が困りごとに気づいてから、調べ、比べ、問い合わせて契約するまでの流れを段階ごとに整理したものです。

どちらも、社内で「誰に向けて、どの順番で何を伝えるか」をそろえるための道具です。大切なのは、想像で人物を作り込むことではなく、問い合わせ記録やインタビューなど、実際のお客様の声を根拠にまとめることです。

この記事では、一人で作るための手順とテンプレート項目、汎用AIを使うときの注意を説明します。手順は当サイトが提案する進め方で、特定の会社の事例ではありません。

1. 材料を集める

まず、お客様の言葉や行動が残っているものを集めます。新しく調査をしなくても、手元にあるもので始められます。

  • 問い合わせフォームやメールの文面
  • 営業・窓口担当の対応メモ、担当者から聞いた話
  • インタビューやアンケートの記録
  • アクセス解析で、問い合わせの前によく見られているページ

集め方は顧客の声を集める方法、話の聞き方は顧客インタビューのやり方で紹介しています。材料が少ない場合は、その状態で作り、「仮」と明記して進めます。

2. ペルソナのテンプレート項目

ペルソナは、次の項目を表に埋めて作ります。ポイントは、各項目に根拠の列をつけることです。根拠が書けない項目は空欄か「未確認」にします。

項目書く内容根拠の例
立場業種、役職、会社の規模感問い合わせ記録の会社情報
抱えている困りごと自社に相談するきっかけになった問題問い合わせの文面
情報の集め方検索、紹介、比較サイトなどインタビュー、流入元のデータ
比べている相手他社、自社でやる、何もしない、など営業担当の話
決めるときに気にすること料金、実績、対応の早さなどインタビュー、商談メモ
社内で相談する相手上司、経理、現場などインタビュー
よく使う言葉困りごとを表すときの本人の言い方問い合わせの文面

年齢や趣味、家族構成などは、BtoB(会社向け)の商売では判断に使わないことが多い項目です。使い道がないなら書かなくてかまいません。人物に名前や写真をつけるかどうかも任意です。

3. カスタマージャーニーのテンプレート項目

ジャーニーは、横に段階、縦に項目を並べた表で作ります。段階の分け方は商売によって変わりますが、最初は次の5段階が使いやすいでしょう。

項目気づく調べる比べる問い合わせる契約・利用
していること—————
疑問・不安—————
接点(見るページ・人)—————
自社が出している情報—————
足りない情報—————

「疑問・不安」の行には、問い合わせやインタビューで実際に出た言葉を入れます。「自社が出している情報」と「足りない情報」を並べると、サイトに追加するページや、書き直す説明の候補が見えてきます。これがジャーニーを作る一番の目的です。

4. 一人で作る手順

材料とテンプレートがそろったら、次の順番で埋めていきます。一度にすべて埋めようとせず、2〜3回に分けて見直す前提で進めます。

  1. 材料から、お客様の言葉を付箋や表の1行ずつに書き出す(要約しすぎない)
  2. 似た言葉をまとめ、多く出た困りごとを1つ選ぶ
  3. その困りごとを持つお客様として、ペルソナの表を埋める。根拠の列も必ず書く
  4. 同じ人物が、困りごとに気づいてから契約するまでを、ジャーニーの5段階に沿って書く
  5. 各段階で見ているはずのページを、自社サイトで実際に開いて確認する
  6. 「足りない情報」の行から、改善の候補を3つ以内に絞る
  7. 営業・窓口担当に見てもらい、実際のお客様とずれていないか意見をもらう

最後の確認は省かないでください。一人で作ると、自分の思い込みが入っても気づきにくいためです。

汎用AIを使うときの注意

ChatGPT などの汎用AIは、表の形を整えたり、集めた言葉を分類したりする作業の手助けになります。一方で、注意したい点もあります。当サイトが提案する使い方と注意点です。

  • 架空の人物像を事実として扱わない:「中小企業のWeb担当者のペルソナを作って」と頼むと、もっともらしい人物像が出てきますが、それは自社のお客様を調べた結果ではありません
  • 実データと照合する:AIの出力の各項目について、手元の記録に根拠があるかを確認し、ないものは消すか「未確認」とする
  • 材料を渡して整理を頼む:ゼロから作らせるより、問い合わせの文面などを渡して「似た内容でグループに分けて」と頼むほうが、根拠をたどりやすい
  • 入力する情報に気をつける:お客様の名前や連絡先など個人を特定できる情報は、社内のルールで認められた範囲を超えて入力しない。必要なら固有名詞を伏せてから渡す

AIの出力は、たたき台として扱います。最後に「この項目の根拠は何か」を自分で説明できるかどうかが、使える資料かどうかの目安になります。

専用サービスを使う場合:GROW の資料との使い分け

Web相談から資料作成まで扱うサービスを使う方法もあります。GROW Agent プロデューサー(以下GROW)は、公式案内によると、公開されているサイトを読み込みながらAIと対話し、その内容を資料にまとめるサービスです。案内されている15種類の資料には、ペルソナとカスタマージャーニーが含まれています。相談・資料作成は無料と公式は案内しています(開始時にサイトのURL・会社名・名前・連絡先の入力が必要)。

GROWに任せられるのは、対話の内容とサイトの情報をもとに、ペルソナやジャーニーの形に整理するところです。人に残る作業は、その内容が実際のお客様と合っているかを、問い合わせ記録やインタビューの結果と照らし合わせて確かめることです。公式の案内は公開ページの読み込みと対話による整理なので、社内にしかない問い合わせ記録やインタビューの内容は、自分で突き合わせる必要があります。

当サイトでは、GROWが作るペルソナ・ジャーニーの内容や品質を実機で確認していません。使う場合は、この記事のテンプレートの「根拠」の列を使って、出力を一項目ずつ確認する使い方をおすすめします。資料の種類はGROWが案内する15種類の資料にまとめています。

作った後の使い方と見直し

ペルソナとジャーニーは、作って終わりではなく、社内で使って初めて意味があります。使い道の例です。

  • サイトの見直しで、どのページに何を足すかを決める材料にする
  • 制作会社に依頼するとき、想定するお客様の説明として渡す
  • 上司への提案書で、改善の理由を説明する根拠にする

上司への説明に使う場合は、上司に出すホームページ改善提案書の書き方も参考にしてください。

見直しは、新しい問い合わせの傾向が変わったとき、インタビューを追加したとき、サービス内容が変わったときに行います。表の上に「作成日」「使った材料」「次に見直す時期」を書いておくと、担当が変わっても引き継げます。