結論:入力する情報の線引きと、サービスの設定を両方確認する

AIサービスに社内の情報を入れる前に確認したいことは、大きく2つです。一つは「どの情報なら入力してよいか」という社内の線引き。もう一つは「入力した情報がどう扱われるか」というサービス側の設定とプランです。

どちらか一方だけでは足りません。学習に使われない設定にしていても、個人情報を入力してよいかは別の問題です。逆に、社内でルールを決めても、使っているサービスの設定が想定と違えば意味がありません。

この記事では、公的機関の注意喚起と、ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotの公式ヘルプで確認できた事実を整理します。確認日は2026年10月19日です。設定の名前や条件は変わることがあるため、使う前に各社の公式ページで確認してください。

公的機関は何を注意しているか

個人情報保護委員会は、2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しています。事業者向けには、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入力する場合は、利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認すること、と示しています。

さらに、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があると指摘しています。そのため、サービス提供事業者がそのデータを機械学習に利用しないことなどを十分に確認すること、とされています。一般の利用者に向けても、提供事業者の利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認するよう求めています。

組織で生成AIを導入・運用する際の考え方は、IPA(情報処理推進機構)の人材育成プログラムの成果物「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(2024年7月)にもまとめられています。導入担当・運用担当・セキュリティ担当それぞれの考慮事項や、利用ルールの作り方が章立てされています。社内ルールを本格的に作るときの参考になります。

入力してよい情報・避ける情報

次の表は、当サイト編集部による目安です。会社に規程がある場合は、そちらを優先してください。

区分例扱いの目安
入力しやすい自社サイトに公開済みの文章、公開済みの会社概要・サービス説明、一般的な質問社内ルールで認められたサービスなら入力しやすい
加工してからアンケートの自由記述、問い合わせ内容、社内の議事メモ氏名・連絡先・会社名などを削除し、個人や取引先が特定できない形にしてから
確認してから未公開の企画、売上や予算などの社内の数字、取引条件上司や情報管理の担当に確認し、法人プランなど扱いが確認できたサービスに限る
入力しないパスワード・APIキーなどの認証情報、顧客の個人情報の一覧、契約上秘密にすべき情報AIに入力しない。社内で決められた方法で管理する

迷ったときは「この内容が社外の人に見られても問題ないか」を基準にします。問題がありそうなら、入力しないか、特定できない形に書き換えます。

具体名を伏せても、作業の質は大きく落ちないことが多いです。「A社」「商品X」「顧客1」のように置き換え、出力を受け取ってから手元で実名に戻す方法があります。

ChatGPT:データコントロールと法人向けプラン

OpenAIのヘルプセンター「ChatGPT のデータ管理」では、「設定」から「データコントロール」を開き、「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話はOpenAIのモデルの学習に使われないと案内されています。サインインしている場合、この設定は端末に関係なくアカウント全体に適用されるとされています。

一時チャットは、チャット履歴に表示されず、モデルの改善に使われない一方で、安全上の理由から最大30日間保持される場合があると説明されています。また、学習をオフにしていても、回答に「いいね」「よくないね」などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われることがあるとされています。

法人向けについては、同じヘルプで、ChatGPT Business・Enterprise・Edu・ヘルスケア向けのワークスペースのコンテンツは、既定でモデルの学習に使わないと案内されています。OpenAIの「エンタープライズプライバシー」のページ(2026年1月更新)でも、これらのプランとAPIについて、既定ではデータを学習に使用しないと記載されています。

Claude・Gemini・Copilot:公式ヘルプで確認できたこと

Claude(Anthropic):Anthropicのプライバシーセンターの個人向けプラン(Free・Pro・Max)の説明では、利用者がモデルの改善への利用を許可した場合などに、会話が学習に使われるとしています。設定はプライバシー設定の「Model Improvement(モデルの改善)」で変えられ、シークレット(Incognito)チャットは、この設定がオンでも改善に使われないと案内されています。法人向け製品(Claude for Work、API など)の説明では、既定では入力・出力を学習に使わないとしつつ、フィードバックを送った場合などは例外になるとしています。

Gemini(Google):Geminiアプリのプライバシーハブでは、「アクティビティの保存」がオンのとき、チャットやアップロードしたファイルが生成AIモデルのトレーニングを含むサービスの改良に使われると説明しています。オフにすると今後のチャットはトレーニングに使われない一方、応答や安全確保のために72時間保存されるとしています。レビュアーに見られたくない情報や機密情報は入力しないよう求めています。仕事用のGoogle Workspaceアカウントについては、別のプライバシーハブで、事前の許可や指示なしに顧客データをモデルのトレーニングに使わないと案内しています。

Copilot(Microsoft):Microsoft Learnの「エンタープライズ データ保護」の説明では、組織のアカウントで使うMicrosoft CopilotとCopilot Chatのプロンプトと応答は、基盤モデルのトレーニングに使われないとされています。個人のMicrosoftアカウントで使う場合は扱いが異なる可能性があるため、職場のアカウントでサインインしているかを確認しましょう。

上の内容は2026年10月19日に各社の公式ページで確認した範囲です。プランの名前・設定の名前・保存期間は変更されることがあります。利用前に、出典欄のリンクから最新の内容を確認してください。

設定とプランの確認手順

使っているサービスについて、次の順番で確認します。一度確認したら、結果を記録して社内で共有しておくと、ほかの人が使うときにも役立ちます。

  1. 個人のアカウントか、会社が契約した法人向けプランかを確認する
  2. 個人向けプランなら、学習に使う設定(モデルの改善・アクティビティの保存など)がどうなっているかを確認する
  3. 法人向けプランなら、管理者に、学習の扱いと保存期間の設定を確認する
  4. フィードバック(いいね・よくないね)を送った場合の扱いを確認する
  5. 一時チャットやシークレットモードの扱いと保存期間を確認する
  6. 確認した日付・プラン・設定の状態を記録する

個人のアカウントを業務に使ってよいかは、会社によって方針が分かれます。上司や情報システム担当に確認してから使いましょう。

社内ルールの最小例

本格的な規程がまだない会社でも、まずは次のような短いルールから始められます。当サイト編集部が作った例であり、法的な助言ではありません。社内の事情に合わせて調整してください。

  1. 業務で使ってよいAIサービスは[サービス名・プラン]とする。それ以外を使う場合は[上司名]に相談する
  2. 入力してよいのは、公開済みの情報と、個人や取引先が特定できない形に加工した情報とする
  3. 個人情報、認証情報(パスワード・APIキーなど)、未公開の数字や取引条件は入力しない
  4. 個人向けプランを使う場合は、学習に使う設定をオフにする
  5. AIの出力は下書きとして扱い、公開・提出の前に担当者が事実と数字を確認する
  6. 迷ったときは入力せず、[相談先]に確認する
  7. このルールは[半年]ごとに見直す

ルールは長いほど守られにくくなります。最初は1枚に収まる長さにして、実際に困った場面が出たら追加していくほうが続けやすいでしょう。

GROWに会社名・連絡先・サイトURLを入れる前に

当サイトで紹介しているGROW Agent プロデューサーは、アカウント登録は不要ですが、相談を始めるときに会社名や連絡先、相談対象のサイトURLを入力する仕組みです。使う前に、公式サイト ↗から辿れる利用規約とプライバシーポリシー(いずれも2026年10月15日改定)で、次の点を確認しておきましょう。

  • 取得する情報:会社名・部署名・氏名・メールアドレス・電話番号・サイトURL、対話の内容と作成した書類、サイトの公開情報。アクセス解析の接続やファイルの添付は、選んだ場合のみと記載されています
  • 外部への送信:対話の内容やサイトの公開情報、添付ファイルの内容は、応答を作るために委託先の生成AIサービスへ送信されると記載されています。保存先は国内(東京リージョン)で、AIによる処理は日本国外で行われる場合があるとされています。個別の事業者名は問い合わせで案内するとしています
  • 使いみち:相談への回答と書類の作成、再開のための保存、相談内容についての連絡など。品質改善は個人が特定できない形に集計して行うとしています。GoogleやMetaから取得したデータは、AIモデルの学習に使わないと明記されています
  • 保存期間と削除:登録情報・対話・書類は最後の利用から2年間。期間内でも、申し出があれば本人確認のうえ30日以内に削除するとしています
  • 連絡:相談内容について運営会社から連絡がある場合があると、利用規約に書かれています

入力するのは、公開済みのサイトについての相談と、社外に出してよい範囲の情報にとどめるのが当サイトの提案です。会社として使ってよいかは、上の内容を上司や情報管理の担当と確認してから判断してください。